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第27部分

幽霊西へ行く(日语原文)-第27部分

小说: 幽霊西へ行く(日语原文) 字数: 每页4000字

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ものはいざとなると、あの小説の大臣ぐらいには働くものなのですよ」
 嘲笑《ちようしよう》するような一言《ひとこと》を残して、彼は検事局を去りましたが、私はその時電気にでも打たれたように、頭の中にある考えが閃《ひらめ》いたのです。
 私は早速警察署へ電話し、捜査主任を同道して、横井氏の家へ赴《おもむ》きました。そしてポ违钎濂靴螭韦瑜Δ士激ǚ饯恰ⅳ栅郡郡痈鞑课荬驐省钉筏椤筏伽菩肖盲郡韦扦埂
 ところが夫人の居間へ来たときに、私の眼は夫人の鏡台の前に止まったのです。鏡台の上には粉白粉《おしろい》の箱《はこ》が一つ蓋《ふた》を開いたまま、出し放しになっていたのでした。
「君、これに気がついたかね」
 私は傍《かたわ》らに立っていた主任にたずねました。
「いいえ、全然気がつきませんでした」
 私はその答えをきいた時に、ぐっと心に思いこたえたものがあったのです。その外《ほか》には私の注意をひいたものはありませんでしたが、しかしその白粉の箱の中には、たしかに砒素《ひそ》が入っていたのでした……。
 私の決心はこれできまりました。私は十二分の自信をもって、彼女を殺人罪として起訴《きそ》することが出来たのです。
 彼女は公判|廷《てい》に於《お》いてさえ、終始犯行を否認しつづけましたが、私は最早何の迷いも不安もなく、殺人罪として死刑《しけい》を求刑《きゆうけい》しました。
 判決は結局一等を減じて、無期|懲役《ちようえき》にきまりましたが、判決の決定した時に、私の方へ上げられた彼女の眼の光を、私は永久に忘れることは出来ますまい。あんな眼は私の長い検事生活にも、初めての恐《おそ》ろしい経験だったのです。
 彼女は上告でも同じ判決を下され、結局服役中に病気で死亡したとききました。横井氏の弟は、その後応召し、北支で戦死したとかいうことです。
 この事件は私が在職中に扱《あつか》った数多くの事件の中でも、最も忘れ難い事件だったのです。
 湖水の表面は碧玉色《へきぎよくしよく》に美しく輝《かがや》きわたり、森の中で鳴いている蝉《せみ》の声が、はじめて私の耳に入った。私は今まで、夢中《むちゆう》になって彼の話に耳を澄《すま》していたのだった。
「どうも詳《くわ》しいお話を、有難うございました。なるほどポ巍旱痢钉踏埂筏蓼欷渴旨垺护ⅳⅳ胜郡摔饯问录斡洃洝钉筏颏瑜撙à椁护郡铯堡扦工汀
「そうです。あのような人間心理の弱点を巧《たく》みに把握《はあく》したポ稀ⅳ郡筏宋难飞悉瞬恍唷钉栅妞Α筏蚊蛑埂钉趣伞筏幛胩觳扭胜韦扦工汀
「勿論《もちろん》です。ポ翁觳扭摔纤饯庾{辞《さんじ》を惜《おし》む者ではありません。そして私などは、その点ではポ巫Α钉膜帷筏喂浮钉ⅳ筏驀L《な》める資格さえありません。しかし偅证丹蟆ⅳ长涡≌hには今一つの解答があると思うのですが」
「それはどういう解答なのですか。デュパンの推理に、あなたは铡嚒钉搐婴妞Α筏ⅳ毪趣いΔ韦扦工1摔狭⑴嗓说沥蓼欷渴旨垽虬k見出来たではありませんか」
「なるほど、あなたは『立派に』といわれましたね。手紙は邸内《ていない》にはない。というのが警視|総監《そうかん》の第一の解答でした。手紙は邸内にある。というのがデュパンの第二の解答でした。
 彼は自らの解答にしたがって、立派に手紙を発見出来ました。しかし私の第三の解答では、それが『幸撙恕护刃拚丹欷毪韦扦埂
「あなたは何をいおうとなさるのですか」
「それでは、私の、あの小説に対する第三の解答を申し上げましょう」
 盗《ぬす》まれた手紙は最初には邸内には隠《かく》されていなかった――。
 私の推理はそれを根本の仮説として出発します。デュパンが大臣の邸《やしき》を訪《おとず》れたのは、警視|総監《そうかん》の三か月にわたる捜査《そうさ》が、失敗に終わった後だった、ということを忘れてはなりません。
 総監は三か月の間、大臣の邸を捜査しぬいたのです。椅子《いす》のクッションには針が刺《さ》しこまれ、敷地《しきち》の煉瓦《れんが》の接ぎ目には拡大鏡がむけられたのです。
 それにもかかわらず、大臣は平気で夜の間家を空《あ》けて外出しておったのでした。警視庁の一隊は強盗《ごうとう》を装《よそお》って、路上に彼の身体検査を行いました。それも一度や二度には止《とど》まらなかったのです。
 その一方、大臣はその手紙を持っていることを力にして、一日一日と政治的な圧力を加えて行きました。そして三か月の捜査に疲《つか》れ切って、総監がデュパンの許《もと》を訪れた時には、大臣を取り巻く政治的な陰帧钉い螭埭Α筏稀ⅳ饯问旨垽蚣纯獭钉饯膜长肥褂盲返盲毪长趣颉ⅳいいà欷屑纯唐皮イ毪长趣隼搐毪韦颉⒈匾趣工攵坞Aにまで進行していたのです。
 これがデュパンが、邸内に手紙がかくされている、と推理した根本の理由だったのですね。たしかに事態はその時は、そこまで進行していたかも知れません。しかし総監《そうかん》が捜査《そうさ》を開始した当時から、事態がそこまで進行していたとは、私にはどうしても思えないのです。なぜかというと、大臣はその間は、平気で夜に家を空けて外出しています。勿論《もちろん》手紙は絶対につけてはおりません。とすれば、外出先で、その手紙を破き去らなければならない事態が発生したとすれば、大臣は一体どうすればよいのでしょう。
 また相手が死物|狂《ぐる》いになって大臣を誘拐《ゆうかい》し、どこかに軟禁《なんきん》して、手紙の在り場所を白状させようとする手段に出ることも、考えられないではありません。勿論その時は、まだ手紙が発見されないということが、大臣にとっても大きな護身の武器となるでしょう。しかしその危険を防ぐためには、手紙は絶対に発見されてはならないのです。
 デュパンの推理は理論的には、一点の矛盾《むじゆん》もないように思われます。巴里《パリ》の警視庁のやり方をよく知りぬいている大臣が、逆に手紙を露出《ろしゆつ》して捜査《そうさ》の裏を掻《か》いたという考え方は、たしかに素晴《すば》らしい着想に摺钉沥筏いⅳ辘蓼护蟆
 しかし大臣はそのことに思い当たったときに、偶然《ぐうぜん》というものの力を恐《おそ》れはしなかったでしょうか。推理によって、捜査の目標は完全にそらすことが出来たにもせよ、何か偶然《ぐうぜん》の力が働いて、誰《だれ》かの手がその封筒《ふうとう》にふれることはないだろうか。――これは人智《じんち》の推《お》し測《はか》り得るところではありません。どんな数学者でも詩人でも、偶然の力に対抗して推理を進めて行くことは出来ないのです。
 大臣は数学者と詩人との、相反する両面の性格を備えていました。そして詩人ほど、偶然の力の大きさを感じている者はないのです。その自然の力に抗《こう》してまで、手紙を邸内《ていない》にかくすということは、真の詩人にはなし得ない冒険《ぼうけん》ではありますまいか。
 大臣は一旦《いつたん》その手紙を、邸外《ていがい》のどこかにかくしていたのではないでしょうか。それは警視庁の捜索《そうさく》の力の及《およ》ばない所です。そして一方では、三か月の間警視庁を無益につかれさせ、一方では着々と、陰帧钉い螭埭Α筏斡嫽蜻Mめて行ったのではありますまいか。
 これは勿論《もちろん》フェアプレイではないかも知れません。しかし陰证摔膝榨Дⅴ抓欹い胜嗓ⅳ甑盲瑜Δ悉氦ⅳ辘蓼护蟆
 このようにして三か月後には、総監《そうかん》は絶望し切って、手紙は邸内にはない、という第一の解答に到達《とうたつ》しました。
 大臣の予想したように、その邸内はいわば完全に免疫《めんえき》され切ったのです。第二次の捜査がもし行われたとしても、それは情熱を欠いた、なおざりのものに過ぎますまい。
 一方|陰帧钉い螭埭Α筏伟k展は手紙の使用を即時《そくじ》に必要とするかも知れない、という事態にまで進展しました。大臣は今度こそ偶然《ぐうぜん》にも対抗《たいこう》し得る、という十分の自信をもって、初めて手紙を邸内《ていない》に持ちこみ、状差しの中にさしこんだのではありますまいか。
 デュパンは幸撙摔猡长长槌霭kすることが出来たのです。そのために彼の第二の解答が勝利を占《し》めたのです。しかしデュパンが、総監《そうかん》と同じ段階から出発していたら、盗《ぬす》まれた手紙を発見することは果たして出来たでしょうか。私は多分に疑いを挿《はさ》まずにはおられないのです。大臣は偶然との勝負に敗北した。デュパンは幸撙藧{《めぐ》まれて勝利を得た。
 これが私のこの小説に対する、第三の解答なのです」
 私は強く言い切って偅质悉晤啢蛞姢膜幛郡ⅳ饯晤啢摔悉い膜伍gにか、強い疑惑《ぎわく》と不安の影《かげ》が漂《ただよ》いはじめているのを、私は十分に見て取ったのだった。
「この第三の解答は、あなたの今お話しになった事件には、存在していないのでしょうか。私がお伺《うかが》いした限り、この事件には第一に、横井氏の自殺という解答があるように思われます。部屋《へや》の鍵《かぎ》の件と加藤氏の話とが、それを暗示します。おそらくあなたも内心では、それを疑っておられたのではないでしょうか。その割り切れない、形をなしていない不安が、あなたに起訴《きそ》を躊躇《ちゆうちよ》させるように動いたのではありますまいか。
 第二の解答は、夫人が横井氏を毒殺した、という見方です。これは木炭の件によって証拠《しようこ》づけられております。あなたが後日鏡台の前の白粉箱《おしろいばこ》の中から発見された砒素《ひそ》が、有力な一つの手掛《てが》かりです。しかし私はこの事件にも、第三の解答が存在すると考えるのです。
 白粉箱の中には最初から砒素がかくされてあったのでしょうか。いや白粉箱は最初からその部屋にあったのでしょうか。
 あなたはその砒素を発見なさらなかったら、第二の解答をあくまで固執《こしつ》されておったでしょうか。
 あなたの性格には、多分に暗示と刺戟《しげき》とに感じ易《やす》い一面が存在すると思います。あなたが私に、今日この事件のお話をして下さったのは、どういうわけだったのでしょう。私の持っていたこの小説に刺戟されたためではありませんか。そして私が今日ポ味唐钉郡螭冥螭筏妞Α筏虺证盲皮长长丐浃盲评搐郡韦颉ⅳⅳ胜郡蠀gなる偶然《ぐうぜん》とお考えですか。それと同時に、横井氏の弟があなたを訪《たず》ねて、ポ巍旱痢钉踏埂筏蓼欷渴旨垺护摔膜い普Zったのも、これも単なる偶然に過ぎないのでしょうか。
 デュパンの場合は、結果に於《お》いて第二の解答も第三の解答も、一致《いつち》した点に到達《とうたつ》しました。偶然はデュパンに味方していたのです。しかしこの場合、あなたが偶然に悾钉幛啊筏蓼欷郡瓤激à皮い郡长趣稀ⅳ工伽频谌撙摔瑜盲迫藶椤钉袱螭ぁ返膜耸私Mまれた、恐《おそ》ろしい陥穽《かんせい》ではなかったでしょうか。
 大臣は勿論《もちろん》、デュパンが手紙を発見するとは、予想してはいませんでした。しかし横井氏の弟は、この小説の聯想《れんそう》によって、あなたが白粉箱《おしろいばこ》の中にかくされた砒素《ひそ》を発見することを、予想していたのではないでしょうか。それではなぜ警察が捜査《そうさ》に当たった時は、発見されなかったのでしょう。その部屋《へや》の写真は撮影《さつえい》されていましたか」
 彼はだまって頭を垂《た》れた。その答えは明らかに――否だったのだ。
「警察が部屋を捜索《そうさく》した時に、その白粉箱がなかったとします。勿論そんな物一つ二つの有無など、誰《だれ》も気にとめてはいないでしょう。しかし、もしその時あったものならば、誰かの手に触《ふ》れていたろう、ということはいえるでしょうね。それでいて誰にも気づかれず、あなたが初めて気がついたというのでは何だか話が上手《じようず》に撙螭扦赀^ぎるではありませんか。
 それでは白粉箱を鏡台の前に置いたのは、一体誰なのでしょう。時間的にも心理的にも、横井氏の弟が一番疑われるではありませんか。いやおそらく彼以外に、そんなことをする可能性のある人間はいないでしょう。しかし彼は何のためにそんな冒険《ぼうけん》をしたのでしょうか。
 彼は夫人が兄の殺人犯人として処刑《しよけい》されたならば、兄の財産をそっくりそのまま受け継《つ》ぐことが出来ます。あの兄弟には首吊《くびつ》りの足でも引っ張りか

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