好き≠恋(日文版)-第10部分
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「クラスでお前だけだぞ。未定と書いて出したのは……」
「……決まっていないんですよ。本当に」
クラスで健人だけだと言われても、出しようが無いものをどうにかすることは出来なかった。健人が俯いていると、目の前から小さく息を吐き出す音が聞こえた。それがため息だと気づき、健人は顔を上げる。
「佐偅坤盲郡椤⑿肖堡氪笱Г夥鶐冥い坤恧Δ恕_M学するか就職するか迷ってるなら、進学しておいたほうがいい」
きっぱりと言い放った財前に、健人は何も答えなかった。今回の進路アンケ趣稀⒕吐殼工毪M学するか、大まかな選択肢だった。特に行きたい大学を書きなさいなど、細かい伲鼏枻弦磺肖胜ⅳ胜堡胜筏俏炊à妊预冥Oけられていたのを良い事に、健人はそれに丸をつけた。こうして問い詰められるのなら、初めから未定と言う欄なんて作らなければ良かったのだ。
「……とにかく、まだ決める気はありません」
これ以上、話すことは無いと健人は立ち上がった。通り過ぎようとする健人に、財前は「親の前でもそう言えよ」と冷たく言い放つ。なぜ、そんなことを言ってきたのか分からないが、健人は「言われなくても言うつもりです」と言って教室から立ち去った。
午前中で授業が終わってしまったせいか、教室には誰も居なかったが、昇降口へ行くと人がまばらに歩いていた。そこまで来てようやく、息を吐き出して、健人は少し壁に凭れかかった。期末だからと根を詰めすぎた気がする。昨日、一昨日とさほど眠れてなかったせいか、頭が重たかった。
下駄箱から靴を取り出し、健人は地面へと投げた。転がった靴を履いて外に出ると、眩しい太陽が健人を襲う。
眩しいと、目を細めた、その瞬間だった。頭が猛烈に眩み、立っていることが出来なくなる。体がふらついて、倒れると思ったときに誰かが健人の体を支えた。
うっすらと目を開けて、健人は支えてくれた人の顔を見る。
「……同じ、クラス……、だったよな。あの、煩いのの片割れ」
倒れそうになった健人を支えてくれたのは、同じクラスの林ツバサだった。滅多に喋ることのないツバサが、まさか支えてくれるとは思わず、健人は目を見開いた。テスト習慣も終わり、これから部活動が始まるのだろう。ツバサは制服姿ではなく、剣道の胴衣を着ていた。
「片割れ……、じゃない」
双子のように言われ、健人はすぐに否定した。頭のふらつきもすぐに消え、健人は「ごめん」と言い地に足をつける。勉強しすぎたせいで倒れたなんて家族にバレれば、それこそ大問睿摔胜辘饯Δ馈
「……へぇ、双子じゃなかったんだ。苗字同じだから、双子だと思ってた」
興味のなさそうな声が聞こえて、健人は顔を上げた。ツバサと喋ること以前に、ツバサの声を聞くのはあまり無いから、凛とした通る声に健人は少し驚いた。それに、学校中を探しても、健人と歩が双子だと思っているのはツバサ以外、誰も居ないだろう。天然なのかと、健人は思った。
「日陰で少し休んでいったほうが良い。熱中症を馬鹿にすると、またその辺でぶっ倒れる」
「……あぁ、ありがとう」
「お前の片割れ煩いから嫌いだけど、お前は煩くないから……。嫌いじゃない」
口元だけ、ほんのりと浮かべた笑みに健人は唖然とした。教室へ来るなりにすぐ寝てしまうツバサは、いつも同じ表情をしていて、笑ったりすることなど見たことが無かった。それと、あまり興味を抱いていなかったと言うのも、見ていない理由の一つだった。
ぽかんと口を開けて、健人がツバサを見上げていると、「あ、そうだ」と言ってツバサは健人を見下ろした。
「昇降口で待ってろ」
ツバサは先ほど健人が出てきた昇降口を指差し、袴を翻して走り去っていった。理事長の孫で剣道で推耍Г丹臁ⅴ攻荸‘ツ特待の資格を持っているから風当たりがキツイと言う噂を耳にしたことがある。そんな噂が流れているにも関わらず、ツバサは全くそんなことを気にせず毎日を過ごしている。それはそれで凄いことだと思った。走り去っていった後姿を見つめ、健人はため息を吐く。待ってろと言われてしまった以上、ここで待たなければいけない。下駄箱に凭れかかっていると、数分後にツバサが汗を流して戻ってきた。
「熱中症ってのは、脱水症状が一番多いんだ。だから、飲んでから帰れよ」
ツバサが持っていたのは、スポ磨丧辚螗坤盲俊2瞍烦訾丹欷骏丧辚螗蚪∪摔蓼袱蓼敢姢膜幛皮い毪取ⅰ笗r間無いから、早く受け取れ」と腕を突き出される。勢いのまま受け取ってしまい、ペットボトルの冷たさから良く冷えているのが分かった。
「あ、ありがとう。ほんと、何から何まで……」
「帰り道に倒れてたとか言われたら、後味悪い。それ、部から持ってきた奴だから気にすんなよ」
健人がもう一度、ありがとうと言おうとしたときに「せんぱぃ 工却螭ど私∪摔紊丹欷俊¥饯紊衰磨啸丹舷婴饯Δ暑啢颏筏啤⒄瘠攴丹搿
「は、や、し、せんぱぃ ·猡Δ达垺⑹长伽沥悚い蓼筏咯‘?」
陽気な声がツバサを呼んでいる。その声を聞くなりに、ツバサははぁと大げさにため息を吐いて「煩いのが来た」と不機嫌を露にした。パタパタと走って来たのは、ツバサと同じ服を着た背の高い男。先輩と呼んだからには、1年生なんだろう。
「少し、休んでから帰れよ」
ツバサは走ってきた後輩を無視して、健人に話しかける。ツバサも歩と同じぐらい背が高く、並んでいると健人は顔を少し上げないといけない。それ以上に、やってきた後輩は背が高かった。そちらばかり目が行ってしまい、健人はジッと見つめてしまった。
「あれ⒘窒容叅韦堰_ですか? 林先輩っていつも一人でいるイメ袱瑥姢啤⒂堰_なんていないと思ってました!」
明るくそういう後輩に、ツバサは「クラスメ趣馈工妊预盲平∪摔槟郡蛞荬椁筏俊¥丹辘菠胜幛い长趣蜓预盲郡摔忾vわらず、ツバサはそれを気にすることなくスル筏皮い搿¥饯韦浃耆·辘稀橐姢皮い毪趣趣皮馄婷瞍胜猡韦坤盲俊
「じゃぁ、俺、部活あるから行くわ」
「……あ、うん。これ、ありがとう」
健人がスポ磨丧辚螗驋鳏菠毪取ⅴ磨啸丹舷趣郅嗓韧袱瑜Δ丝谠坤蓖幛蓼护啤袱嗓χ陇筏蓼筏啤工妊预ぁ㈦Oに立っていた後輩を無視して歩き始めた。ツバサが歩き始めたのを見て、後輩は健人に「失礼します」と最敬礼をしてからツバサの後を追った。
さすがは剣道をしているだけあって、とても礼儀正しいと思った。立ち去っていく二人の後姿を見つめて、健人はもらったスポ磨丧辚螗违悭氓驻蜷_けた。知らない間に喉が渇いていたようで、一口、飲み込んでからはごくごくと喉を鳴らしてペットボトルの半分ほど飲んでしまった。
キャップを椋Г幛啤⒔∪摔膝讠氓去堀去毪颏肖螭沃肖耸宋瑜盲俊¥猡Φ工欷毪长趣蠠oいだろう。そう勝手に決め付けて、健人は昇降口から出た。
テストが終わった後、すぐにテスト休みに入ってしまい、健人はツバサにもう一度礼を言うチャンスを失ってしまった。終業式で学校へ行ったときは、大会が近いからと言って練習のために教室へは顔を出さなかった。結局、礼を言うことも出来ずに、健人は夏休みを迎えてしまった。
特にやることの無い夏休み。誰かと撸Г旨s束をしているわけでも無いし、撸Г埭Δ趣馑激盲皮い胜盲俊3跞栅椤⑺揞}に取り掛かったせいで、健人はほぼ1日で宿睿蚪Kわらせてしまった。華の17歳に沢山の宿睿虺訾筏皮庖馕钉胜い确证盲皮い毪韦⑺揞}の量はさほど多くない。大半の人が、31日になってから慌てて取り掛かる宿睿颉⒔∪摔悉工挨私Kわらせてしまった。
窓から見える外は、非常に暑そうで、陽炎が揺らめいている。強い日差しは窓の外からでも良く分かり、外へ出る気が一気に殺げた。健人は4月に買った数学の参考書を手に取った。健人が買った数学の参考書は高校生が使うような参考書ではない。もう少し高度な、大学生レベルの参考書だった。この参考書を買った時点で、大学に行こうと言う気は少なからずあったのだが、その一歩が踏み出せなかった。
夏休み前に行った進路面談では、宣言したとおり、決まっていないと母の前で告げた。その後、家族会議が開かれたけれど、健人はまだ決めないの一点張りでその場を鎮めた。歩はあまり良い顔をしていなかったけれど、健人の人生に歩が干渉してくる筋合いは無い。ぴしゃりと両親の言葉を遮断してしまったせいか、あれから健人に進路のことを尋ねては来なかった。
どうして、大学に行くことを決めれないのかと言うと、健人は独り立ちしたいという気持ちが強かった。大学へ行って一人暮らしするのも手だが、家賃や学費を出してもらうことは親に養ってもらっていることとなる。それが嫌だから、健人は進路について物凄く迷っていたのだった。
面談の時、財前は健人に「大学へ行った方が良いと思うぞ」と言った。何で、大学へ行った方が良いと言うのか理解できなかった。学歴のためなんだろうか。ただの紙切れ一つで人を判断されるのは、無性に腹立つ。そいつの本伲ⅳ饯渭埱肖欷吮恧欷皮い毪韦妊预à肖饯Δ扦悉胜い坤恧Α¥筏贰⑹坤沃肖违伐攻匹啶趣筏茮Qまってしまっているのだから、仕方のないことだった。
健人は寝転がったまま、参考書を顔の上に仱护俊1九铯文兢蝿訾い然欷袱盲啤⒓垽蝿訾い强驻颏工挨搿T倮茨辘谓い瑜Δ扦蓼肋hい未来のことを今から決めるなんて、子どもと大人のはざまである高校生に決めることなんて出来なかった。
考え込んでいたら眠ってしまったようで、気付けば、夕方近くになっていた。昼飯も食べずに寝ていたせいか、変な時間に腹が減ってしまい、リビングへ行くと母が夕食の準備を始めていた。
「……あら、健人。あんた、暇でしょ? ちょっと手伝ってよ」
2階から降りてきた健人に、母はそう言った。健人は少しだけ笑みを浮かべて「分かったよ」と言い、母の隣に並ぶ。険悪な状態で進路の話を終わらせてしまったから、少しぐらいは弁解した方が良いかと思ったが、話を振ってくるまでは答えないことにした。
「今日は何にするの?」
「暑くなってきたから、スタミナが付くものにしようかしらね。健人も、ク椹‘が効いた部屋ばっかりに居ると、夏バテになるわよ」
「……部屋にはク椹‘あんまりかけてないんだ。寝る時ぐらいだよ」
全部屋ク椹‘が取りつけられているが、健人はあまりク椹‘を好まなかった。今まで使ったことが無いと言うのを前提に、ク椹‘の風に当たりすぎると体を冷やして体眨虮坤工长趣啶盲俊7櫎蜷_けて扇風機を回しているだけでもかなり涼しいと、健人は少しだけ悲しそうな顔をした母を見て励ますように言った。
「ク椹‘なんて無い生活だったもんね。今さら、ク椹‘なんてそんなに使えないわよね」
隣で笑う母を見て、少し無理をしているように見えた。健人に苦労をかけまいとしてくれているのは嬉しいが、二人きりの生活の方が何倍も楽しかった。それは凄く辛いことだったのかもしれないけど、二人の間を誰も邪魔しなかった。貧しくて欲しいものも買えなかったけど、健人がそのことに文句を言うことは無かった。母さえいれば、健人は良かったのだ。
「来年、お父さんの十三回忌ね」
「……もうそんなになるんだ」
ジャガイモの皮を剥いている母を見て、健人は父が死んでそんなに経っているのかと思い知らされた。記憶の片隅に残っている父は、すでに顔はぼやけて思い出せない。どんな人だったかすら、欷盲皮い毪瑜Δ扦悉盲辘趣纤激い坤护胜盲俊¥饯欷扦馑坤螭扦筏蓼盲繒rのことは良く覚えていて、動かない父を見て「なんで寝てるの?」と尋ねたことは今でも明瞭に思い出せる。その時の母は、悲しそうに目を伏せて、健人に「もう起きないのよ」と言った。
どうして起きないのか不思議だったが、自然とそれを受け入れていた。ピクリとも動かない父が、人ではなくなったと、子供ながらに理解していたんだろう。
「お盆はお墓参りも行かないといけないわね。予定がいっぱいだわ」
「……そうだね」
適当に相槌を打って、健人は玉ねぎの皮をむき始めた。普段から家にいる母が予定がいっぱいだと言うのは珍しく、たまたま予定が詰まったからそう言っただけなのだと思っていた。
大して気にしていなかった健人に、このあと、衝撃的な事実が待ち受ける。
この日は珍しく歩も早く帰ってきた。定時に帰ってきた義父と歩が降りてきて、夕飯の支度が大忙しになる。一人でてんやわんやしている母を尻目に、健人は味噌汁をよそってテ芝毪丐葋Kべた。今日の夕飯は